文化

ロシア人の対人感覚(職場にて)

あなたの周りにロシア人はいますか?

私の個人的感覚では、ロシア人と日本人は共感可能な、お互いにわかりあえる民族同士だと思っているのですが、これはもはやロシアとの付き合いが長くなってきているからでしょう。

一般的には、日常生活の中でロシアという国が存在しているということを思い出すことが1秒たりともない、という人が大部分だと思います。

しかし、急にロシアという国、あるいはロシア人と接しなければならなくなる人もいます。

例えば、ロシアに異動になった! とか。逆にロシア人が職場に異動してきた!/ロシア人が入社してきた! とか。あるいは、家の近所にロシア人が引っ越してきた! とか。

ここでは、職場でのロシア人を取り上げてみましょう。

基本ロシアはタテ社会

ロシア人は見た目は欧米人と変わらないし、アジアな日本とは所詮相いれない、という印象があるかもしれません。

日本人から見た欧米人の印象、「ドライ」で「個人主義的」というのが通説かなと思います。

はたしてロシア人は「ドライ」で「個人主義的」でしょうか?

「ドライ」で「個人主義的」かというと、少なくとも職場においては」と私は言いたい!

もしあなたがロシア人と一緒に働くならば、集団におけるロシア人の態度というのは家族における人間関係と多くの点で似ている。すなわち、「上司と部下」という関係は基本的に権威主義の上に成り立っている。(「君上司なら、ぼくバカ者、ぼく上司なら、君バカ者」という非肉のこもった「ポピュラーな」口語的言い回しすらある)

出典”Можно? Нельзя? Практический минимум по культурной адаптации в русской среде”(「OK? ダメ? ロシア社会での文化受容に必要な実用ミニマム」)、N.ヴォリスカヤ他著、2004年、4刷、Русский язык.Курсы出版社、12ページ(拙訳)

引用にある「家族における人間関係」とは、年長の者もしくは男性に家族の者は付き従うという関係性のことです。(参照→ロシア人と家族について)

 権 威 主 義 

そう、基本的に職場のロシア人は権威主義的です(゚Д゚;)

上は上、下は下

上の引用にある「君上司なら、ぼくバカ者」……運転手は君だ、車掌はぼくだ♪のようなノリですね。

意味するところは、「上にいるものがとにかく正しい」です。

ちょっとロシア現代小説からの引用を見てみましょう。

「……彼はあなたの机も(勝手に)整理整頓しようとしたのでしょ? あなたはそのことで彼に意見しなかったのですか?」
「しませんでした。一応彼は上司なので」

出典”Шестёрки умирают первыми”(下っ端のやつらが先に死ぬ)、A.マリーニナ著、2003年(©︎2002)、Эксмо出版社、43ページ(拙訳)

引用は、著者マリーニナによるミステリーシリーズ、中でも犯罪分析官アナスタシヤ・シリーズは32作も続く人気ぶりで(2019年9月現在)、現代社会の犯罪だけでなく、一般市民の生活の細部まで極めてリアルに描かれていることがその理由だと思います。小説ではありますが、作中で現代ロシア人のリアルな生活を垣間見ることが可能です。

引用は、上司がちらかった部下の机を勝手に整理整頓してしまったことについてのやりとりです。

普通であれば、たとえ上司であっても、他人の机を勝手に触ることはありえません。しかし、部下は「上司なので意見できない」という。上司の言うこと、することは絶対というわけなのです。

私が個人的に垣間見ることのあったケースだと、某ビッグイベントで某お偉方をお迎え・お見送りすることになったロシア人組織。お偉方へのメンツを保つべく、「列車の特等席を用意しろ!」と部下たちへ一斉にお達し。しかし、すでに満席でチケット入手が不可能と判明します。しかし、上司は「なんとしても確保しろ!」の一点張り。部下たちは泣きながらも奔走させられるわけです。普通なら、満席はいかんともしがたいものですが、部下たちはそれでも奔走するのです。(そして、この時は確かロシア人たちの無謀な要求が押し通って、特等席をゲットしておりましたΣ(゚д゚lll))

これは一例ですが、上司は理不尽な要求をすることがままあり、部下はどんなことをしてでもそれを実現させるべく奔走させられるというのが私の印象。ただ、あまりに実現不可能だった場合、ダメだったと報告すると案外「あっそ」で終わったりして拍子抜けすることもあり。

また、ロシア人の時間感覚で「時間に対する寛容さ(というか大雑把さ)」に触れましたが、上下関係が絡む場合は話が別です。

上司が部下をある時間に来るようにというと、部下は必ずしもその時間に上司に会えるわけではないが、部下は指定された時間に行かなければなりません。(医者と患者、教師と学生などにおいても同様のことが言えます)

出典”Можно? Нельзя?..”(前掲書)、12ページ(拙訳)

上司の言うことは絶対

ロシア人を上司に持つと大変……?(;´Д`)

同僚は仲間? ライバル?

ロシア人集団の中では、自分の同僚に対する不満を上司へ訴えたり、同僚の仕事に対する批判をしないということを覚えておいてください。これは、ロシア人が同じ集団の中のメンバー同士が競争し合うのを好まないことと関係しており、周りを抜きんでよう、追い越してやろうする人は非難されることになります。

出典”Можно? Нельзя?..”(前掲書)、13ページ(拙訳)

ロシアでも「出る杭は打たれる」わけですね!

もちろん、努力して出世した人は尊敬されるのですが、自分の成功をこれ見よがしに自慢すると非難の対象になる、ということです。(前掲書、13ページ) このあたりは日本でも同じ感じですよね。

ロシア人を部下に迎えると……

とある日本人オーナーがロシア人を雇用したケースが、『ロシアの躁と鬱――ビジネス体験から覗いたロシア――』(中尾ちゑこ著、2018年、成文社)で描かれていますので、ご紹介。

日本で開店したロシアレストランでロシア人夫婦を雇用しました。迎えるオーナーは、夫婦を大歓迎し、日本での生活用品を整え、服やアクセサリーまでプレゼントしてあげました。これに気をよくしたロシア人夫婦は、どんどん言いたい放題やりたい放題。これにオーナー側が辟易して、挙句の果てにクビにするしない問題にまで発展したとのこと。

最初に迎え入れる時の対応が一番肝心。
日本側は遠くまで、初めての海外へよく来てくれましたと友人のように迎え入れる。が、ここでお友達関係になってはいけない。あくまで雇用主として接することだ。……

「特別な人扱い」すると自分たちは店にとって「特別な人」なんだと、素朴なロシア人を勘違いの自惚れに陥らせてしまう。

出典『ロシアの躁と鬱』(前掲書)、152ページ

日本側の「おもてなし精神」とロシア側の「素朴さ」、いずれも素晴らしい資質なのに、融合した結果がとても残念です。(このレストランの場合は、本著書の著者中尾さんの助言によりうまく問題解決したとのこと)

ロシア人ももてなし好きな民族として有名です。しかし、仕事上の人間関係となると「タテの人間関係」の方が重視されるわけですね。

職場におけるロシア人の人間関係をまとめると、基本「タテ社会」、そして意外と「出る杭は打たれる社会」……なんか、日本の会社のようですね?

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