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形容詞の性・数、主格形
まずは形容詞の基本形
日本語で形容詞といえば、まず「〜い」で終わるものが思い浮かぶと思います。例えば、「面白い」、「早い」などですね。変化の仕方によっては、「新しい」、「楽しい」がシク活用と分類されることもありますね。
ロシア語の形容詞の基本形は、なんと日本語と同じく「〜い」で終わります。
- 「新しい」=новый ノーヴィイ
- 「若い」=молодой マラドーイ
- 「小さい」=маленький マーリンキィ
※単語中、赤い部分にアクセントがあります。
基本形と言いましたが、この形、実はより正確には「形容詞・男性主格形」といいます。そして、この「男性主格形」が、形容詞の単語の意味を辞書で調べるときの形となります。
男性主格形ということは……
男性主格形ということは、女性主格形もあるのか?
そう思われた方は大正解! 名詞についての記事を先に読まれた方は、さらに、「どうせ中性もあるんだろ〜」と思われたかもしれませんね……。中性だけじゃないですよ、複数だってあるんです。
形容詞は名詞と運命共同体、名詞に依存している、名詞の下僕…… おおっと、「下僕」は言い過ぎですが、形容詞の形は、修飾する名詞によって決まります。つまり、先に名詞の性と数について理解していなければなりません。(名詞の性と数についてはこちら→性・数)
では、順番に見ていきましょう。
男性主格形
まずは男性名詞を修飾する場合。
形容詞は、ひとまず「赤い」、「金色の」、「紺色の」を取り上げて、具体例を見ていきます。(ノ形容詞についてはこちら) ロシア語はそれぞれ次の通り。
- 赤い=красный
- 金色の=золотой
- 紺色の=синий
形容する対象はスーツケースとしましょう。「スーツケース」はロシア語で「чемодан」、男性名詞です。「〇〇色のスーツケース」は次のようになります。
- красный чемодан=赤いスーツケース
- золотой чемодан=金色のスーツケース
- синий чемодан=紺色のスーツケース
日本語や英語と同じように、「形容詞」+「名詞」と並べればOK!
中性主格形
今度は、中性名詞として「ワンピース」を取り上げてみましょう。「ワンピース」はロシア語で「платье」、中性名詞です。「〇〇色のワンピース」は次の通り。
- красное платье=赤いワンピース
- золотое платье=金色のワンピース
- синее платье=紺色のワンピース
男性主格形と比べると、形容詞の最後の2文字分が変化しました(下線部分)。「ое / ее」となりました。これが中性主格形の「語尾」になります。(「語尾」=単語の変化する部分)
女性主格形
次に同じ形容詞を使って、「カバン」を形容してみましょう。ロシア語の「カバン」は「сумка」、女性名詞です。「〇〇色のカバン」は次の通り。
- красная сумка=赤いカバン
- золотая сумка=金色のカバン
- синяя сумка=紺色のカバン
中性主格形と比べると、形容詞の最後の2文字分が変化しました(下線部分)。「ая / яя」となっていますね。これが、形容詞の女性主格形の「語尾」になります。
名詞の性を区別するときにも単語の最後に着目しましたが、形容詞も同じことが言えそうですね。
というわけで、次。
複数主格形
最後に、複数主格形を見ていきましょう。複数形になると性の区別があいまいになり、「複数」というひとまとまりになります。具体的に見てみましょう。
- красные чемоданы=赤いスーツケース(複数)
красные платья=赤いワンピース(複数)
красные сумки=赤いカバン(複数) - золотые чемоданы=金色のスーツケース(複数)
золотые платья=金色のワンピース(複数)
золотые сумки=金色のカバン(複数) - синие чемоданы=紺色のスーツケース(複数)
синие платья=紺色のワンピース(複数)
синие сумки=紺色のカバン(複数)
修飾される名詞は男性・中性・女性名詞ですが、複数形の「語尾」はいずれも「ые / ие」です(下線部分)。
ちなみに、今更ですが、男性主格形の語尾は「ый / ой / ий」の部分となります。
形容詞主格形まとめ(1)
男 性 | 中 性 | 女 性 | 複 数 | |
赤色タイプ | -ый | -ое | -ая | -ые |
金色タイプ | –ой | –ое | –ая | –ые |
紺色タイプ | -ий | -ее | -яя | -ие |
便宜上、「赤色タイプ」、「金色タイプ」、「紺色タイプ」と命名しました。
「赤色」と「金色」はほぼ同じですが、(1)男性形が異なる、(2)「金色タイプ」は必ず語尾にアクセント、という点で異なります。
一般的な教科書では順に「硬変化I」「硬変化II」「軟変化」と呼ばれています。
形容詞主格形まとめ(2)
「まとめ(1)」とくれば、もちろん「まとめ(2)」もありますよ~。しかも、「まとめ(2)」にも3種類の変化タイプがあります。
まとめ(2)の前に正書法のはなし
「まとめ(1)」と「まとめ(2)」の違いはわずかなのですが、「正書法」が絡んできます。特定の文字の後には特定の文字が書けないというやつです。正書法を簡単にまとめると次の通り。
- к, г, хの後には「я, ы, ю」が書けない → 代わりに「а, и, у」を書く
- ж, ч, ш, щの後にも「я, ы, ю」が書けない → 代わりに「а, и, у」を書く
この正書法、形容詞に限らず、語形変化が起こるときには常に注意しなければなりません。なかなか面倒くさい代物です。
ここでは正書法に関わる文字を2種類に分けました。❶「к, г, х」と❷「ж, ч, ш, щ」です。なんで、この分類? ……は、下に続きます。
ビッグタイプ
1つ目。ひとまず、ビッグタイプとひとまず命名します。
- 「大きい」=「большой」
「まとめ(1)」を見ると、変化語尾は「ой」、つまり「金色タイプ」です。
上記の表を参照すると、「большой – большая – большое – большые」となります。
しかし、下線を引いた複数形の部分「Ш – Ы」という並んではいけない文字列ができてしまいました。そこで「ы」を「и」に変えます。つまり「большие」が正解形となります。
こうなるのは、語尾を取り除いた部分に、❶、❷の子音字が出てくるとき、かつ、語尾にアクセントがあるとき、です。
例:чужой(他人の)、плохой(悪い)、морской(海の)……など。
スキータイプ
2つ目。例として「ロシアの」を取り上げてみましょう。
- 「ロシアの」=「русский」
「まとめ(1)」を見ると、変化語尾は「ий」、「紺色タイプ」です。
しかし、語尾の直前の文字が❶の場合、その形容詞は必ず「赤色タイプ」の変化をします。「русский」の語尾「ий」の直前の文字は「к」、つまり❶です。
しかし、正書法に引っかかります。ここでは、いけない文字列が2か所で出現していますね。「русскый」と「русскые」です。「К – Ы」はいけません。「ы」を「и」に変えましょう。つまり、「русский」と「русские」が正解形です。
例:ветхий(とても古い)、строгий(厳しい)……など
ちなみに、この混合タイプは「-ский」で終わる形容詞が多いので「スキータイプ」と命名しましょうかね。
グッドタイプ
3つ目。例として「良い」を取り上げてみましょう。
- 「良い」=「хороший」
「まとめ(1)」を見ると、変化語尾は「ий」、「紺色タイプ」です。
そう、やはりいけない文字列が出てきました。「хорошяя」の「Ш – Я」はいけません。こういう時は「я」を「а」に変えて「хорошая」が正解形です。
ちなみに、語尾にアクセントがなくて、語尾の直前の文字が❷の場合、「紺色タイプ」です。ただ、正書法の関係で混合するように見えるので、このタイプを「グッドタイプ」とよんでおきます。
例:ближайщий(最寄りの)、горячий(熱い)、говяжий(牛肉の)
まとめ(2)のまとめ
男 性 | 中 性 | 女 性 | 複 数 | |
ビッグタイプ (金色タイプの変形) |
-ой | -ое | -ая | -ие |
スキータイプ (赤色タイプの変形) |
-ий | -ое | -ая | -ие |
グッドタイプ (紺色タイプの変形) |
-ий | -ее | -ая | -ие |
オレンジの色が付いているところが、基本形と異なる部分です。
一般的な教科書では順に「混合変化II」「混合変化I」「混合変化III」と呼ばれています。(←数字は間違いにあらず)