文法・品詞別(形容詞)

形容詞について②(形容詞の性・数、主格形)

形容詞の性・数、主格形

まずは形容詞の基本形

日本語で形容詞といえば、まず「〜い」で終わるものが思い浮かぶと思います。例えば、「面白い」、「早い」などですね。変化の仕方によっては、「新しい」、「楽しい」がシク活用と分類されることもありますね。

ロシア語の形容詞の基本形は、なんと日本語と同じく「〜い」で終わります。

  • 「新しい」=новый  ノーヴィ
  • 「若い」=молодой  マラドー
  • 「小さい」=маленький  マーリンキ

※単語中、赤い部分にアクセントがあります。

基本形と言いましたが、この形、実はより正確には「形容詞・男性主格形」といいます。そして、この「男性主格形」が、形容詞の単語の意味を辞書で調べるときの形となります。

男性主格形ということは……

男性主格形ということは、女性主格形もあるのか?

そう思われた方は大正解! 名詞についての記事を先に読まれた方は、さらに、「どうせ中性もあるんだろ〜」と思われたかもしれませんね……。中性だけじゃないですよ、複数だってあるんです。

形容詞は名詞と運命共同体、名詞に依存している、名詞の下僕…… おおっと、「下僕」は言い過ぎですが、形容詞の形は、修飾する名詞によって決まります。つまり、先に名詞の性と数について理解していなければなりません。(名詞の性と数についてはこちら→

では、順番に見ていきましょう。

男性主格形

まずは男性名詞を修飾する場合。

形容詞は、ひとまず「赤い」、「金色の」、「紺色の」を取り上げて、具体例を見ていきます。(ノ形容詞についてはこちら) ロシア語はそれぞれ次の通り。

  • 赤い=красный
  • 金色の=золотой
  • 紺色の=синий

形容する対象はスーツケースとしましょう。「スーツケース」はロシア語で「чемодан」、男性名詞です。「〇〇色のスーツケース」は次のようになります。

  • красный  чемодан=赤いスーツケース
  • золотой чемодан=金色のスーツケース
  • синий чемодан=紺色のスーツケース

日本語や英語と同じように、「形容詞」+「名詞」と並べればOK!

中性主格形

今度は、中性名詞として「ワンピース」を取り上げてみましょう。「ワンピース」はロシア語で「платье」、中性名詞です。「〇〇色のワンピース」は次の通り。

  • красное платье=赤いワンピース
  • золотое платье=金色のワンピース
  • синее платье=紺色のワンピース

男性主格形と比べると、形容詞の最後の2文字分が変化しました(下線部分)。ое / ее」となりました。これが中性主格形の「語尾」になります。(「語尾」=単語の変化する部分)

女性主格形

次に同じ形容詞を使って、「カバン」を形容してみましょう。ロシア語の「カバン」は「сумка」、女性名詞です。「〇〇色のカバン」は次の通り。

  • красная сумка=赤いカバン
  • золотая сумка=金色のカバン
  • синяя сумка=紺色のカバン

中性主格形と比べると、形容詞の最後の2文字分が変化しました(下線部分)。「ая / яя」となっていますね。これが、形容詞の女性主格形の「語尾」になります。

名詞の性を区別するときにも単語の最後に着目しましたが、形容詞も同じことが言えそうですね。

というわけで、次。

複数主格形

最後に、複数主格形を見ていきましょう。複数形になると性の区別があいまいになり、「複数」というひとまとまりになります。具体的に見てみましょう。

  • красные чемоданы=赤いスーツケース(複数)
    красные платья=赤いワンピース(複数)
    красные сумки=赤いカバン(複数)
  • золотые чемоданы=金色のスーツケース(複数)
    золотые платья=金色のワンピース(複数)
    золотые сумки=金色のカバン(複数)
  • синие чемоданы=紺色のスーツケース(複数)
    синие платья=紺色のワンピース(複数)
    синие сумки=紺色のカバン(複数)

修飾される名詞は男性中性女性名詞ですが、複数形の「語尾」はいずれも「ые / ие」です(下線部分)。

ちなみに、今更ですが、男性主格形の語尾は「ый / ой / ий」の部分となります。

形容詞主格形まとめ(1)

男 性 中 性 女 性 複 数
赤色タイプ -ый -ое -ая -ые
金色タイプ ой ое ая ые
紺色タイプ -ий -ее -яя -ие

便宜上、「赤色タイプ」、「金色タイプ」、「紺色タイプ」と命名しました。

「赤色」と「金色」はほぼ同じですが、(1)男性形が異なる、(2)「金色タイプ」は必ず語尾にアクセント、という点で異なります。

一般的な教科書では順に「硬変化I」「硬変化II」「軟変化」と呼ばれています。

形容詞主格形まとめ(2)

「まとめ(1)」とくれば、もちろん「まとめ(2)」もありますよ~。しかも、「まとめ(2)」にも3種類の変化タイプがあります。

まとめ(2)の前に正書法のはなし

「まとめ(1)」と「まとめ(2)」の違いはわずかなのですが、「正書法」が絡んできます。特定の文字の後には特定の文字が書けないというやつです。正書法を簡単にまとめると次の通り。

  1. к, г, хの後には「я, ы, ю」が書けない → 代わりに「а, и, у」を書く
  2. ж, ч, ш, щの後にも「я, ы, ю」が書けない → 代わりに「а, и, у」を書く

この正書法、形容詞に限らず、語形変化が起こるときには常に注意しなければなりません。なかなか面倒くさい代物です。

ここでは正書法に関わる文字を2種類に分けました。「к, г, х」と「ж, ч, ш, щ」です。なんで、この分類? ……は、下に続きます。

ビッグタイプ

1つ目。ひとまず、ビッグタイプとひとまず命名します。

  • 「大きい」=「большой

「まとめ(1)」を見ると、変化語尾は「ой」、つまり「金色タイプ」です。

上記の表を参照すると、「большой – большая – большое – большые」となります。

しかし、下線を引いた複数形の部分「Ш – Ы」という並んではいけない文字列ができてしまいました。そこで「ы」を「и」に変えます。つまり「большие」が正解形となります。

こうなるのは、語尾を取り除いた部分に、の子音字が出てくるとき、かつ、語尾にアクセントがあるとき、です。

例:чужой(他人の)、плохой(悪い)、морской(海の)……など。

スキータイプ

2つ目。例として「ロシアの」を取り上げてみましょう。

  • 「ロシアの」=「русский

「まとめ(1)」を見ると、変化語尾は「ий」、「紺色タイプ」です。

しかし、語尾の直前の文字がの場合、その形容詞は必ず「赤色タイプ」の変化をします。「русский」の語尾「ий」の直前の文字は「к」、つまりです。

ということは、「русскый – русское – русскаярусскые」にならないといけないはず?

しかし、正書法に引っかかります。ここでは、いけない文字列が2か所で出現していますね。「русскый」と「русскые」です。「К – Ы」はいけません。「ы」を「и」に変えましょう。つまり、「русский」と「русские」が正解形です。

例:ветхий(とても古い)、строгий(厳しい)……など

ちなみに、この混合タイプは「-ский」で終わる形容詞が多いので「スキータイプ」と命名しましょうかね。

グッドタイプ

3つ目。例として「良い」を取り上げてみましょう。

  • 「良い」=「хороший」

「まとめ(1)」を見ると、変化語尾は「ий」、「紺色タイプ」です。

そうすると、хороший – хорошее – хорошяя – хорошиеとなるけど……あれ?

そう、やはりいけない文字列が出てきました。「хорошяя」の「Ш – Я」はいけません。こういう時は「я」を「а」に変えて「хорошая」が正解形です。

ちなみに、語尾にアクセントがなくて、語尾の直前の文字がの場合、「紺色タイプ」です。ただ、正書法の関係で混合するように見えるので、このタイプを「グッドタイプ」とよんでおきます。

例:ближайщий(最寄りの)、горячий(熱い)、говяжий(牛肉の)

まとめ(2)のまとめ

男 性 中 性 女 性 複 数
ビッグタイプ
(金色タイプの変形)
-ой -ое -ая -ие
スキータイプ
(赤色タイプの変形)
-ий -ое -ая -ие
グッドタイプ
(紺色タイプの変形)
-ий -ее -ая -ие

オレンジの色が付いているところが、基本形と異なる部分です。

一般的な教科書では順に「混合変化II」「混合変化I」「混合変化III」と呼ばれています。(←数字は間違いにあらず)

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