教科書

『耳が喜ぶロシア語』藻利佳彦、バソヴァ・オリガ、山内真、吉見薫著

『耳が喜ぶロシア語:リスニング体得トレーニング』、藻利佳彦、バソヴァ・オリガ、山内真、吉見薫著、三修社、2013年

ありがたい中級向け教本

つい先日、ご紹介した『日本人が知りたいロシア人の当たり前』の記事の中で、「ロシア語中級学習者向けの教科書・参考書が少ない!!」と声高に叫びました。「少ない!」と感じるのは、もちろん英語や中国語、ドイツ語、フランス語などとの比較です。

早々にこの主張を覆すわけではありませんが、もちろん中級者向けの教材、なくはありません。

というわけで、本記事でご紹介するのが中級向けの学習書です。外国語の学習書を数多く出版している出版社・三修社の1冊です。

そして、副題にあるように、リスニング力の向上を目的としています。

豊富なテーマ、スピーディーな朗読

構成としては、ステップ1~3の3部構成、「ステップ1はロシア語能力検定3級、ステップ2は2級、ステップ3は1級を目指す人」向けとなっています。(「はじめに」より)

テーマはロシアの地理・歴史にはじまり、現代の日常生活で関わりうるあらゆるもの(教育、結婚、仕事、料理……)が扱われています。だいぶ幅広いです。また、本書はリスニング教本であるため、音源はセットで販売されていて、全テキストの音源がCD2枚に収められています。

リスニング向上用だけあって、朗読は快速かつ音吐朗々。初級者向けの教材の音源では聞くことのないスピードです。ステップ1は40秒~1分程度、ステップ2は1分半前後、ステップ3は2分半前後と、分量もレベルごとに一定で、少しずつ耳を慣らしていくのにも適しています。

また、本書の「はじめに」でも書かれていますが、目立った特徴として挙げられるのが「数詞」です。ステップ1の段階から、テキストの長さの割に数字がやけにでてきます。

実際、ロシア語の数字は厄介です。時間や値段の表現になれた人でも、小数点や分数、さらにその格変化形…… テキストを読む場合、数字で書かれていれば意味は分かるので読み飛ばすこともできますが、しゃべるときには数字をしゃべり飛ばすわけにはいきません。そんな数字がいろんな表現・形式で使われていて、それが音声で聞けるのです。なかなかレアな教本です。

最初の教科書で文法を一通り学び、何らかの単語集1冊を覚えてしまい、その教科書と単語集に載っている単語では物足りなくなってきたころが、本書を手に取るタイミングかもしれません。

多少のツッコミどころはご愛嬌

ツッコミどころといっても、本書の価値を下げるようなものではなく、私自身が使用してみて、純粋に「オイ!」とツッコミたくなった、というだけの話です。いくつか挙げてみますね。

まず、各テキストにタイトルがついているのですが、今一つ飛びつきたくなるようなテーマではない、ということが一点。

例えば、ステップ1のテキストのタイトルをいくつか挙げてみると、「乗り物」「ホッケー」「サーカス」、ステップ2では「モスクワ」「サンクトペテルブルグ」「スカーフ」「健康」、そしてステップ3では「日々の糧について」「文化生態学」……

うーん。

タイトルの問題かもしれませんが、そんなに興味がそそられる感じがしません。特に、ステップ1は文字数(時間数)制限が厳しかったのでしょう、テキストを読んだところで、内容的には消化不良のようになるのが否めません。ステップ2以上になると、多少読みごたえが出てくるのですが。

タイトルの命名がいまいちですが、内容が全部つまんないかというとそうでもなく、思いがけない変化球があったりして、そこもまたツッコミどころだったりします。例えば、「職業」。(ステップ1より)

私が「職業」で思い浮かべる内容は「最近の人気の職業とか、医者やら教師といった特定の職業について述べる」ですが、本書で扱っているのは「世の中に数多くの職業がある中で、現在すたれた職業がある。例えば、御者」

御者?!

最初聞いた時は目が点になり、その後、テキストの内容よりも「なぜ御者?!」という思いばかりが頭を巡りました。

あるいは「文学」(ステップ1より)。

文字数の限られた文章のなかで、無難にロシア文学の「黄金時代」を選ぶのではなく「銀の時代」を選択するセンスも渋いのですが、代表的な作家の名前を挙げるのに、「バリモント、ブリューソフ、ブローク、ベールイ、グミリョフ、アフマートヴァ、マンデリシュターム」って…… 何人挙げるねん!!!

文字数も限られているテキストの中で、7名もの名前を挙げるのは多すぎるように感じます。しかし、「誰を削ろう…… 誰も削れない! 全員挙げておこう!」とか考えながら作成したのだろうか、など逆に妄想を楽しみました。

ちなみに、この列挙のところ、CDでは吹込者のバソヴァさんは息が切れそうになってます。(そのように聞こえます) いやー、やっぱ並べ過ぎだって(笑)

本書使用法の一例

「❶トラックの音声を聞く、❷ロシア語を確認、❸わからない部分は、日本語を確認、❹聞き取れない部分がなくなるまで聞きこむ」が本書で推奨されている使い方です。

あるいは、シャドーイングの練習にも使うことができる、とあります。(「はじめに」より) シャドーイングとは、「耳から聞いた音声をすぐに口で発声する訓練」で、通訳技能訓練としても用いられることがあるようです。

この通りが一番良いとは思いますが、私なりの使い方をご紹介。

シャドーイングにももちろん適しているテキストですが、私はこれを暗記・暗唱用として活用しています。講師歴20年にもなるのに、何でって? 認知症予防だよっ!! 悪いか!

  1. 1トピック分のトラックの音声を聞き、ロシア語/内容を確認
  2. 分からないところは訳を参照(ここまでは、本書の推奨のまま)
  3. ↑この作業を日曜日に行い、そこから毎朝10分程度の時間を設けて、1週間かけてシャドウイングからの丸暗記
  4. 丸暗記するにあたり、火曜日~水曜日あたりで、音源を倍速にしてシャドウイングを挟むと丸暗記するまでの時間が短縮する(ような気がする)
  5. 木曜日あたりから、10分程度の暗唱を終えてから、1分間体幹トレーニングをしながら暗唱
  6. 土曜日に丸暗記完了(翌日曜日に新トピックに入る)

❸❹は、右脳を活性化させて語学学習を促進するという「七田式英語学習法」(by七田眞氏)を試しに取り入れてみたものです。の朝10分を確保するのが難しい人は、御自身で都合のつけやすい時間帯でもいいかもしれません。私は『超右脳つぶやき英語トレーニング』(登内和夫他著、総合法令出版、2003年)を参照し、そのまま実践しています。

は、単に私が運動不足解消も兼ねたかっただけです(笑)。体幹が弱いので、プランクを毎日せめて30秒〜1分やりたいと思っていたのに、プランクだけだとモチベーションがわかなかったんです。本書のステップ1はちょうど40〜60秒!

相当つらい。でも、2つのやりたいことが合わさると、ものすごいモチベーション! そして、プランクの最中の脳の活性化のすごいこと! 目を剥きながら、息も絶え絶えに暗唱をやると、脳も目と同じくらい剥けるような感じ(笑)  (注:科学的実証はありません)

ただし、人目につかないようにやるのをお勧めします。(相当ヤバい人に見えます)

以上、中級向けオススメ学習書でした。

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